Karl Höfner(カール・ヘフナー)
通称Höfner。ヴァイオリンベースといえばHöfnerというほど、ヴァイオリンベースを一躍有名にしたブランドです。元々はヴァイオリンやチェロ、コントラバスといったヴァイオリン属の弦楽器を製造するドイツの老舗楽器ブランドでした。音楽シーンの変化に対応し、アコースティックギターやエレクトリックギター、エレクトリックベースの製造も始め、現在に至ります。
歴史
1887年、カール・ヘフナーによってドイツで創業。ヘフナーは弦楽器工房の出身であり、創業当初はヴァイオリン属の弦楽器を製造する工房でした。後に彼の息子2名が工房スタッフに加わり、周辺諸国への輸出が進みました。1930年代頃にアコースティックギター製造を開始し、大人数の従業員を抱える楽器メーカーへと成長を遂げましたが、第二次世界大戦中(1939-45年)に楽器製造が困難になる事態となりました。大戦後、生産拠点が失われたことにより、ヘフナー親子は西ドイツのバイエルンへと拠点を移します。
1950年に新工場が完成し、ギターの生産が活発になります。1956年に後の代表機種であるヴァイオリンベース「500-1」を完成させ、それを1961年にポール・マッカートニーが使用したことで一躍有名になります。2005年より廉価版製造のため北京に会社を設立。
ヴァイオリンベースはGibson社が開発したEB-1が最初の機種とされていますが、ヘフナーはそれを参考に500-1を開発。かねてよりヴァイオリンやコントラバスの製作で得たノウハウを活かして更に良いエレキベースを作れるという見込みがあったようです。
主な製品
500-1

ヴァイオリンベースの代表とも言えるKarl Höfner製エレクトリックベースの看板商品。前述の通りThe Beatles(ビートルズ)のPaul McCartneyがデビュー当初よりレフティ仕様の500-1を使用していたことで有名になりました。The Beatlesの影響を受けたバンドや彼らのコピーバンド等のベーシストにも多く使われています。
独特のモコモコとしたサウンドは一度聴けば印象に残るでしょう。超凄腕ジャズ・ファンクトリオ、Medeski, Martin & Wood(メデスキ、マーティン・アンド・ウッド)のベーシストであるChris Wood(クリス・ウッド)も500-1を使用しており、そのモコモコとしたサウンドで絶妙にファンキーなグルーヴの演奏を聴かせてくれます。
また、俳優でミュージシャンの岸部一徳も500-1を愛用しており、ベーシストとして高い評価を得ています。
Club 40

フルアコースティックギター(通称フルアコ)。こちらも同じくThe BeatlesのJohn Lennon(ジョン・レノン)とGeorge Harrison(ジョージ・ハリソン)がデビュー前に使っていたことで有名な機種です。限定復刻モデルであるClub 40 John Lennon Editionが2007年に発表されています。
上位機種にClub 50、Club 60等が存在。また、Club 40はモダンスペックで復刻されています。
現在の主な製品ラインナップは以下。
- Vintageシリーズ
- HCT 500シリーズ
- CLUB 40
- CLASSIC GUITAR HMシリーズ
特徴
元々ヴァイオリン属の弦楽器を作っていたこともあってか、楽器デザインにおける曲線の美しさはHöfnerならではと言えるでしょう。
代表機種である500-1の参考元となったGibson EB-3と比較すると、ホロウボディによる深みのあるモコモコとしたサウンドが特徴的です。
特にフラットワウンド弦を張った時のモコモコ感は絶妙で、ヴァイオリン属の弦楽器製造のノウハウがしっかりと反映されている印象。
The BeatlesのGet Back等で顕著なうねるようなベースのグルーヴはHöfnerのそういった音響特性も大きく影響していると言えるでしょう。
また、Paul McCartneyの影響でフラットワウンド弦を使用してピック弾きするスタイルが広まったと思われますが、ラウンドワウンド弦を張った指弾きでも味わい深い、独特の深みがあるサウンドが得られます。
前述のChris WoodのジャズファンクにおけるHöfnerのサウンドはベーシスト必聴と言っても過言ではないでしょう。
主な使用ミュージシャン
Paul McCartney - The Beatles(ポール・マッカートニー ビートルズ)

ボディシェイプが左右対称でレフティ仕様でも違和感がなかったことと、形がカブトムシに似ているという理由から気に入っていたようです。
Chris Wood - Medeski, Martin & Wood(クリス・ウッド メデスキ、マーティン・アンド・ウッド)

岸部一徳 - ザ・タイガース、PYG、井上堯之バンド

参考音源
Get Back - The Beatles
進行的にはルートを鳴らし続けるベースラインですが、なんとも言えない絶妙なうねりを感じますね。的確な装飾音とオクターブの往復、そして500-1とフラットワウンド弦の組み合わせによる"まさに"なサウンドが生む独特のグルーヴです。
Chank - Medeski, Scofield, Martin & Wood
Medeski, Martin & WoodとJohn Scofield(ジョン・スコフィールド)の共演バンドによる演奏。ジャズ界屈指のプログレ集団がワンコードの可能性を見せつけてくれます。
そしてここで注目すべきはやはりChris Woodの500-1。ラウンドワウンド弦を指弾きしているようですが、Paul McCartneyのそれとはまた異なる素晴らしいサウンドです。この演奏を聴いてヴァイオリンベースの評価を改めることになった人も多いのではないでしょうか。